nearproの日記

特に意味はありません。主に読んだ本をただただ記録します。

狭き門

狭き門 (新潮文庫)

狭き門 (新潮文庫)

 

お互いを深く愛し合っていたにも関わらず、その愛ゆえに自ら死を選ぶ女の話。

ギリシア的な男と、キリスト教的な女との対比に読めた。ギリシア時代において、徳とは個人の持つ(不平等な)限られた才能を伸ばすことであったのに対し、キリスト教以降の時代では、神への信仰こそ徳であり、その結果、人は神のもとの平等を手に入れた。作中の男は前者を、女は後者なんだと思う。

 

主よ、ジェロームとわたくしと二人で、たがいに助けあいながら、二人ともあなたさまのほうへ近づいていくことができますように。人生の路にそって、ちょうど二人の巡礼のように、一人はおりおり他の一人に向かって、≪くたびれたら、わたしにおもたれになってね≫と言えば、他の一人は≪君がそばにいるという実感があれば、それでぼくには十分なのだ≫と答えながら。ところがだめなのです。主よ、あなたが示したもうその路は狭いのです――二人ならんでは通れないほど狭いのです。

 

ジイドはこの悲劇からこういった教会的な思想を批判したかったらしい。だけど僕は、この女の行動がとても美しく思えることがある。