nearproの日記

特に意味はありません。主に読んだ本をただただ記録します。

田園交響楽

田園交響楽 (新潮文庫)

田園交響楽 (新潮文庫)

 

恋は盲目だと思う。時に恋の感情はあらゆる感情を凌駕する。恋の感情は、あらゆる感情に作用する。ただ、それを感情が恋によってもたらされたことに人は気づかないことが多い。

牧師が盲目の少女を養女にし、愛情を注ぐ。その愛を、アガペーであると思い込もうとするが、牧師の妻は全てを悟っている。少女の言葉、そして実の息子の少女への行動に抱いた感情によって牧師は思い悩む。そして、手術によって開眼した少女は、川に身を投げる。

牧師は報われない恋に対して神に言い訳を求め、少女は牧師に神を見ている。奥さんと息子と牧師と少女。愛情と嫉妬渦巻くB級昼ドラ。

 

牧師さま、あたしの好きなのはあなただということは、よくご存知のくせに。……まあ、なぜ手をお引っ込めになるの? あなたがもし奥さまのないかただったら、あたしこんなこと言いはしませんわ。だいいち、盲目の娘をお嫁にもらうかたなんかありませんものね。でも、どうしてあたしたち、お互いに愛し合ってはいけないのでしょう? ねえ牧師さま、愛するっていうこと、悪いことだとお思いになって?

 

僕の趣味も、僕の思想も、僕の嗜好も、過去の恋がきっと関わっている。たぶん、みんなそんなもんだと思う。でも僕は、それが僕の意志によって獲得したものだと信じたい。

 

大学の授業で、堀茂樹先生(@hori_shigeki)が言っていた言葉を思い出した。

「恋は受難なんです」