真理先生
- 作者: 武者小路実篤
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1952/07/02
- メディア: 文庫
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武者小路実篤と言えば、「お目出たき人」「友情」「愛と死」の恋愛三部作が非常に有名で、どれも素晴らしい童貞文学なのだけど、「真理先生」も清々しいほどの童貞文学。
爽やかで、言葉が清らかに心の中を流ていく。そうして、気づいたら、前を向ける。登場人物の全てが美しい。悪者が居ない。みんな一生懸命生きてる。
下手な新書を読むくらいなら真理先生を読んだほうがよっぽど元気になるし、生きることに喜びを感じることができる。
「色々出して見たのだ。之は十年前にかいたものだが、やはり今のものと共通がある。十年で進歩したのも事実だが、存外進歩しないのも事実だ。やはり僕は僕だ。僕以上にはなれない。僕は僕で満足するより仕方がない。やはり僕は僕の宿命を持っている。杉子さんが出て来ても、僕の宿命はどうにもならないのだ。しかし僕の宿命に無関係とは思わないが、その点この石とそう違っているわけではない。僕はそれを悟る時が来たのだ。もう醜態は演じないですみそうだよ」