桜の実の熟する時
- 作者: 島崎藤村
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1955/05/12
- メディア: 文庫
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去年の秋ごろからもっぱらフランスばかりだったので、久しぶりに日本。読もうと思った理由はタイトルがグッと来たから。
島崎藤村は「破戒」しか読んだこと無かったし、若菜集の「初恋」を国語の授業でやったくらい。どうも自然主義が退屈に感じる性格なようで、あまり読もうとは思わない作家だったんですが。
読んだ時期が良かったのか悪かったのか、内容もとてもグッと感じるものがあった。周囲の大人からの期待と何かを成したいが何を成せばいいのかわからない恐怖、葛藤。まさに青春文学、という感じ。燻っている学生や社会人なりたての心に刺さるものがある。
「まだ自分は踏出したばかりだ」
と彼は自分に言って見て、白い綿のようなやつがしきりに降って来る中を、あちこちと宿屋を探し廻った。足袋も、草鞋も濡れた。まだ若いさかりの彼の足は踏んで行く春の雪のために燃えた。
あと、島崎藤村って初恋のイメージがあって、勝手に純情なピュアボーイだと思ったら、自分の姪っ子と愛人関係になってパリに逃げたりしてて、結構いろいろやらかしてるんですね。