nearproの日記

特に意味はありません。主に読んだ本をただただ記録します。

パリュウド

パリュウド (岩波文庫 赤 559-0)

パリュウド (岩波文庫 赤 559-0)

ジッドがアフリカからの旅行の帰りに書き始めたという小説。何の為にこの風刺を書いたのか、というエピグラフが特徴的。ジッドは、自分の為にこの風刺を書いたのだろう。

情緒不安定な主人公が、パリュウドという話を書こうとするという話。パリュウドは彼の思想であり、彼の友人や社会に対する風刺である。

自分の頭のなかには確かに存在する思想を、言語化出来ないもどかしさ。そしてその思想を誰にも理解されない苦しさ。世界を変えたいと思えば思うほど、世界は変わらず自分を否定してくる。そしてついに、その風刺は自分自身にまで及ぶこととなる。

僕が彼等を責めるのも無理だ、――とはいっても、僕は彼等同様に生活しているんで、しかも生活している事が僕には苦しいんだ……あぁ、僕の頭は絶望だ!――僕は他人に不安が与えたいのだ――そのために散々苦労しているんだ――その癖自分自身を不安にするだけだ……

産みの苦しみ、を味わっている人なら誰しもどこか胸が熱くなるとともに背筋が凍るのではないかと思う。跋詞の詩もとても強烈でグッと来た。あと、ヴァランタンの健康に関する思想は、とてつもなく鋭いので、これはまたいつか何らかの形で考察する必要がありそう。

ちなみにこの本は、つい先日、岩波文庫が復刊してくれたので古本屋で探す必要は無くなった。旧字だけどそれもまた良し。