nearproの日記

特に意味はありません。主に読んだ本をただただ記録します。

一年ののち

一年ののち (新潮文庫)

一年ののち (新潮文庫)

サガンの第三作。田辺聖子の「ジョゼと虎と魚たち」の主人公の名前の元ネタとなったのがこの小説に登場するジョゼであることで有名。また、ジョゼ三部作を成す、「一年ののち」、「すばらしい雲」、「失われた横顔」の第一作でもあります。

25歳で陽気で自由を愛しつつシニカルなジョゼ。そんなジョゼに恋する既婚の作家、ベルナール。その妻でジョゼを大の友人と信じるニコル。ジョゼの恋人、ジャック。パーティ大好きなジョゼの友人、アラン・マリグラスとファニー・マリグラス夫妻。アランの若き従弟、エドワール。エドワールの意中の相手、女優を目指すベアトリス。そのベアトリスを愛人にしようとするジョリオ……

この沢山の人物がフランスのパリを舞台にそれぞれに恋し、企み、交じり合う大人の群像劇。愛とか嫉妬とか成功とか野心とかあらゆる要素をごった煮して出来上がったのがこれですという感じで、好き嫌いが分かれそうな作品。「ジョゼ・ベルナール・ジャック・ニコル」と「アラン・エドワール・ジョリオ・ベアトリス」の奇妙な2つの四角関係が主に話を進めていく。個人的には、前半は読んでいて退屈でしたが、後半はなかなかスラスラ読めた。

これだけ沢山の人が登場し、さまざまな出来事が人々を変えていく。それでも、「一年ののち」には、過ぎ去った一年の時間が存在するだけだ、とベルナールは言う。

去年と同じのだ。覚えている? ぼくたちはここにいた、同じ人たちといっしょに……そして、あのピアニストも同じ曲を弾いていた。彼はきっとほかに考えがないんだろう。ぼくたちだってそうだけど……ね(中略)われわれはまたもや孤独になる、それも同じことなのだ。そこに、また流れ去った一年の月日があるだけなのだ……

とても有名なこのセリフ。さすがの実存主義は、とてもサガンらしい。