暴走ジュリエット
柿喰う客の舞台、女体シェイクスピアの第5弾「暴走ジュリエット」を観ました。
柿喰う客は前回の女体シェイクスピア「失禁リア王」を観て以来。今年の6月に演っていた野田秀樹作・中屋敷法仁演出の「赤鬼」はスケジュール的に観れなかったので久しぶりでした。
おそらくシェイクスピアの中で最も有名なロミオとジュリエットが題材ということで、いつも通りのハチャメチャな感じに仕上がっていました。世界観的に見れば、ウェスト・サイド・ストーリーのほうが近いかもしれません。
ロミジュリの名シーンといえばバルコニーでの「O Romeo, Romeo! wherefore art thou Romeo?」という下りかと思いますが、そのシーンもしっかり面白おかしくなっています。
これでもかって言うほど乱暴でめちゃくちゃなセリフ回しでありつつ、ベースに流れるロミオとジュリエットの世界観を絶妙に壊さない、むしろそれを上手く使っている感じをうけました。ロミジュリはディカプリオしか観ていない!という人でも、全然観やすい感じに出来ていると思います。
こう言ってしまうと、身も蓋もないですが面白かったです。だいぶ笑いました。
こういう原作がしっかりしたものは演出家の腕が問われるので観ていて楽しいですね。
シェイクスピアの中で最も好きな「オセロ」がまだ女体化されていないので、次は是非『早漏オセロー』とかでも演って欲しいなと思います。
ジルゼの事情
OFFICE SHIKA×Cocco「ジルゼの事情」 - YouTube
前回の公演の頃からずっと気になっていた『ジルゼの事情』ですが、再演ということで観にいきました。 劇団鹿殺しは一年前の『BONE SONGS』以来。その次は観に行けず、そのまま充電に入ってしまったので久しぶりでした。
主演のCoccoは10年前くらいに一度、何かのフェスで観た以来。なぜか2年前に急にCoccoブームが自分の中に訪れていたので、そのへんも期待しつつ東京公演千秋楽の当日券を滑り込んでチケット買いました。
大まかなあらすじは、ほぼ『ジゼル』そのもの。そこに夢という大きなベースをもってきて、色んなもので味付けしたような感じ。
生きることと死ぬこと、家族の温かさ、姉妹のすれ違い、夢の挫折、人を愛すること、これから生きる上で僕たちが抱えなければならないものがたくさん詰まっています。
と丸尾丸一郎が言ってるように、とにかく色んなモノを詰めて煮込んで蓋を開けたらこうなった。的な良くも悪くも劇団鹿殺しっぽいな、という作品でした。なんで、鹿殺しが大好きだ!!という人は観て損はしないと思いますし、逆にそうでもない人は「Cocco可愛いー」ないし「Coccoの歌うめー」となって終わりな気がしなくもないです。歌うめーに関して言えば、鹿殺しってことで劇中歌の使い方やクオリティは安心して観ていられるので、それだけでも価値はあると思いますが。
オレノグラフィティが良い味出してて、個人的には良かったです。もうすぐ充電も終わるみたいなんで、今後も期待して行きたいですね。
あと、序盤のCoccoが歌を口ずさむシーンが個人的に一番鳥肌でした。透き通るってああいうことを言うのかと。
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自己を否定する運命と闘うことこそが、人生であり、爆発であると岡本太郎は言う。 その思想はヘーゲルに通じる何かがある。
「芸術は爆発だ」という言葉があまりにも有名になりすぎて、その本質を誤解してしまっていた。
正負ごちゃまぜにした、あらゆる人生のエネルギーを、その瞬間瞬間の闘いの中で爆発させる。そこに運命の面白さがあると言う。
そうは言っても、本人は反論してはいるが、どうしても「岡本太郎は、そりゃ才能があったから言えるんだ」と思ってしまう。己の才能の無さに絶望する人間はどうすればいいんだと思う。
ただ、僕は自分にこう言い聞かす。「才能とは、周りよりも1日長く、その物事に取り組むことができる能力である」と。
闘いの中で、死ぬのもまた、人生。
あれかこれかという場合に、なぜ迷うのか。こうやったら食えないかもしれない、もう一方の道は誰でもが選ぶ、ちゃんと食えることが保証された安全な道だ。それなら迷うことはないはずだ。もし食うことだけを考えるなら。 そうじゃないから迷うんだ。危険だ、という道は必ず、自分の行きたい道なのだ。ほんとはそっちに進みたいんだ。 だから、そっちに進むべきだ。
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人生において影響を受けた人物を挙げよ、と言われたら誰を挙げるだろう。家族、友人知人、教師…ひたすらに挙げるだけでキリがないほどの人物がそうだと答えざるを得ない。しかし、「皆が知っている」という条件をつければ、僕は迷いなく次の二人を挙げる。一人は晋の文公。もう一人はアンドレ・ジッドである。
著者はフランス文学、さらに言えばフランス社会そのものを突き動かしてきたのは「アムール」である、という。17世紀を頂点として完成された絶対王政からブルジョアジーの台頭、王政復古、そして現代に続く歴史の中、その時代時代に模索された愛を、著名な文学作品を参照しながら論じようと試みる本書。割合で言うと、スタンダール・バルザック・モーパッサン・フローベールといった19世紀の文豪に関する話が多い。それくらい、フランス革命とその後の政変が与えた影響というものが凄まじいものだったのだろう。
宮廷愛・寝取られ男(コキュ)・ラマン・年上女の青年食い(その逆もまた)・親子愛・政略的(金銭的)結婚・逃避行・ひとときのアバンチュール・神への愛・略奪への倒錯的な愛……などなどコレでもかという程の沢山の愛が紹介される。こりゃまるで愛の伝道師養成書だと思ってしまうほど。
もちろんそれがフランス固有のものでは無いことを筆者自身も認めているようだが、ほんの100年200年の間にここまで様々な愛が提示されたというのが、まさにフランス文学をフランス文学たらしめているのかもしれない。
以前コレットの解説で鹿島茂が「恋愛とセックスの本質はイニシエーションにある」という興味深い言葉を残していた。儀礼が人や時代によって変化していくからこそ、恋愛の本質は常にそこにあると言える気がする。そして各々によって描かれた、愛はかくあるべし、が常に社会を変えているような気がした。
そもそも物語とは、主人公が身にふりかかる試練を一つ一つ突破していく姿を描くことによって成り立つものであるならば、近代社会において物語を不特定多数の大衆に提供する役割を担う小説が、安穏と暮らす人々の平和な満ち足りた姿ではなく、さまざまな心痛を抱え苦難に揺さぶられる者を好んで主要人物とするのは当然なのかもしれない。ただし、そこで想起しておく必要があるのは、十九世紀小説が過去の神話的、英雄的な物語と異なるリアリズムをおのが道とし、読書の日常によりなまなましく寄り添う物語のあり方を果敢に求めていったという事実である。すなわち小説は「平凡」なものを「真剣」に描き出す場となった。
ちなみに冒頭で挙げたアンドレ・ジッドについては特に触れられることはなかった。自己愛や倒錯的な愛、同性愛なんかに関してはジッドはなかなか参照するに値すると思ったのだけど。そこだけ少し残念。