伊豆の踊子
- 作者: 川端康成
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2003/05
- メディア: 文庫
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20歳のやさぐれた学生が伊豆に旅先で出会った踊り子(14歳)と心をかよわせるハートウォーミングな物語。主人公はたぶん、最初は踊り子に心惹かれつつ、この旅芸人たちを小馬鹿にしていた気がする。そんな主人公にも真心をもって接してくる一団と最終的には意気投合し、舐め腐った若造のデカダンとかニヒルとかそんな人生観が融解していく様が、まさに青春文学。
雨戸を閉じて床にはいっても胸が苦しかった。また湯にはいった。湯を荒々しく掻き廻した。雨が上がって、月が出た。雨に洗われた秋の夜が冴え冴えと明るんだ。跣(はだし)で湯殿を抜け出して行ったって、どうとも出来ないのだと思った。二時を過ぎていた。
踊り子は未だかろうじてきむすめであるが、芸妓である以上、きっとどこかの宴会で汚されて女になるのである。主人公はその必然と、社会という大きな敵を前に、ぽたぽたと涙を流したのではないかと思う。そして、そんな青春の後に残るのは、何も残らないような甘い快さなのだ。