nearproの日記

特に意味はありません。主に読んだ本をただただ記録します。

眠れる美女

眠れる美女 (少女の文学 1)

眠れる美女 (少女の文学 1)

薬によって眠らされた少女の横で眠ることができる男で無くなった老人向けの風俗店の話。実はこの本、2008年の刊行日に買っていたが読まずに放置していた。買った理由は多部ちゃんの写真が使われているからというだけで、読まなかった理由は、当時の僕は前の日記でも書いた通り、川端康成に良い印象をもっていなかったから。

主人公の江口老人は67歳だが、まだかろうじて男である。

眠れる美女の館に通い、少女と一夜を共にするたびに、江口老人は様々な過去を回想する。確実に死へ歩む江口老人が最後にみたのは、夜中に死に絶えた少女と「娘はもう一人おりますでしょう」という館の人間の言葉だった。

まだかろうじて男である江口老人は少女を犯そうと試みたりするも、きむすめであるが故に躊躇するシーンがあったりして、川端康成の「処女」や「善悪」に対する考え方が面白い。

三島由紀夫が言うには、眠らされて何も言わない少女との性愛によって究極の肉体的な愛を描いてるとかどうとか。

男が女に犯す極悪とは、いったいどういうものであろうか。(中略)妻との結婚、娘たちの養育などは、表向き善とされているけれども、時の長さ、その長いあいだを江口がしばって、女たちの人生をつかさどり、あるいは性格までもゆがめてしまったというかどで、むしろ悪かもしれないのであった。世の習慣、秩序にまぎれて、悪の思いが麻痺しているのかもしれないのであった。

寺山修司のあゝ荒野には次の一節がある。「老人に必要なのは、諦めではなくて、もっとひどい絶望か、あるいは偽りの希望かの、どっちかなのだ」